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一度だけ抱いて～花は蝶に誘われてひらく～

第28章 第二部・第六話【春咲く花】　春咲く花

　とにかく面白い老人である。角倉家では乳母や守り役の源五しか心を開ける人がいなかったという栄佐がこの笈馬には懐き、繁くここを訪れていたというのも納得できた。
「茶団子を拵えました。ご休憩なさって下さいませ」
　小紅の声に、笈馬が手を止めて振り向いた。
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