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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第28章 第二部・第六話【春咲く花】 春咲く花

ゆえに、私が戻って参ろうと思ったのも、すべてはあの女の進言があったればこそなのです。母上は小紅を誤解しておられる」
 栄佐が踵を返して出ていこうとしたその瞬間、廊下側の障子が荒々しく開いた。
「殿ッ。なりませぬ、なりませぬぞ」
 飛び込んできたのは用人の佐竹源五郎だった。
「爺」
 栄佐は愕いて源五を見た。源五は首を振った。

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