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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち

「お前は私を買いかぶっているだけだよ。今も私は後悔している」
 武平は血の毛の失せた顔にうっすらと微笑を刷いていた。
「後悔? 何を後悔しているの」
「あの夜のことさ。お前を自分から手放してしまったこと。幾ら悔やんでも悔やみきれない。綺麗事を並べ立てて、結局、いちばん大切なものを私は失ってしまったのかもしれない」

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