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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち

 その小さな穴は難波屋から外の世界へと続いている。ここから小紅の新しい人生が始まるのだ。
 いつしか十六夜の月は雲に閉ざされ、雪は本降りになっていた。幸いなことに、降り止まぬ雪が小紅の小さな足跡をも消してくれた。辺りはひっそりと静まり返り、小紅が消えた壁の穴は椿の茂みがそこにまるで何もないかのように隠している―。

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