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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第4章 【残り菊~小紅と碧天~】 流星

 実際に男は胸に触るどころか掠めることもなかったのだけれど、小紅は過度の反応を示していることに自分では気づかない。
 男は小紅を見て、訝しげに形の良い眉を寄せている。
「何もそんなに怯えなくても良いだろ。冗談だよ、冗談」
 それでもまだ蒼白になって小刻みに身体を震わせる小紅を男は小首を傾げて見つめた。
「あんた、男に手籠めにされそうになったとか、そんな経験があるのか?」
 その問いに、小紅は初めて現(うつつ)に戻った。

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