テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第1章 【残り菊~小紅と碧天~】 始まりは雨

 おきさが小紅に向けるまなざしも似たようなもので、あの細くて険のある眼にじいっと見つめられると、何とも居心地の悪さを感じてしまう。
 しかし、そのおきさも一昨年に亡くなった。義理とはいえ叔母であり、優しい叔父の奥さんなのだから、その不幸を良い気味だと思いはしなかった。以来、武平は倅の準平とともに寡夫(やもめ)暮らしを続けている。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ