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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第4章 【残り菊~小紅と碧天~】 流星

「無一文で家を出たんだもの。そんな贅沢はできないわ」
 その言葉に、栄佐が小首を傾げた。
「お前、どう見たって良いところのお嬢さんだろうのに、一体、何があったんだ?」
「色々と訳ありの身なの。話し出すと長くなるし、今はまだ誰にも話したくないから」
「そっか」
 栄佐はあっさりと引っ込んだ。
「おお、忘れてた。冷めない中に食おうぜ」
 栄佐は小脇に抱えていた紙包みを眼の前に置いた。

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