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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第4章 【残り菊~小紅と碧天~】 流星

「俺は難波屋の主人で準平だ。その娘は近々、俺の女房になるはずだった。祝言も間近だっていうのに、逃げ出しやがったんだ」
 憎々しげな口調に、背筋が寒くなる。このまま連れ帰られれば、どんな酷い目に遭うか知れたものではない。今度こそ、小紅はこの男に陵辱の限りを尽くされた挙げ句、処女を奪われるだろう。
 小紅は我知らず栄佐の手を掴んでいた。身体の震えが止まらない。栄佐が宥めるようにもう一方の手で小紅の手を軽く叩いた。

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