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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第5章 【残り菊~小紅と碧天~】 いちばん幸せな日

―お前さんも色々と大変だったろう。実家の上州屋さんもあんなことになってしまったし、今度は身を寄せた難波屋さんまでが亡くなってしまったからね。
 言葉だけではない労りのこもった慰めに、小紅はつい涙ぐんでしまった。
―家内から聞いているが、お針子としての腕もかなりのものだという。人柄もこれは申し分ないと扇屋さんの方も太鼓判を押して下さっている。どうだね、うちの上の倅が今年、二十一になる。

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