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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第5章 【残り菊~小紅と碧天~】 いちばん幸せな日

 自分はこれから、どうするべきなのだろう。武平を忘れるなんてできない。でも、栄佐のことも好き。二人の男を同時に好きになるなんて、自分はやはり淫らな娘なのだろうか。
 自分で自分の心が判らない。小紅が大きな息を吐いたその時。少し離れた後方から駕籠が近づいてくるのが判った。ここは天下の往来だ。幾ら人気のない外れとはいえ、ぼんやりと歩いていては他の人の迷惑になる。
 ぶつからないように脇によけた刹那、背後から誰かに抱きすくめられた。

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