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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第5章 【残り菊~小紅と碧天~】 いちばん幸せな日

 小紅の出方次第では栄佐まで酷い目に遭わせると脅迫しているのだ。どこまで卑怯な男なのか。準平への気持ちはとうに冷めていたけれど、今はもう憎しみすら感じる。その澄まし返った顔に唾を吐いてやりたい。
 準平は小紅を駕籠に押し込めた。更に筵を降ろそうとしたときだった。
「待て」
 凜とした声が響き渡った。
「栄佐さん!」
 小紅は声の限りに呼ばわった。

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