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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第5章 【残り菊~小紅と碧天~】 いちばん幸せな日

 別に眼を背けるような場面ではないのに、小紅は何故か見ていられなくて、眼を逸らしてしまった。
 小紅と並んで歩きながら、栄佐が言う。
「俺はそのままのお前が良いんだ」
 と、通りの向こうから風車(かざぐるま)売りがやって来る。藁束に色とりどりの風車を挿し、春の風に風車がくるくると回っていた。その情景は一つの想い出を呼び起こす。

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