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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第6章 【残り菊~小紅と碧天~】 運命が動き出す瞬間

 栄佐こと板東碧天が所属するのは安田座である。この安田座はもちろん三座に比すると歴史は浅く正式な認可を受けてはいないものの、名の知れた花形役者を数多く揃えていることで三座を凌ぐ人気を博していた。
 むろん、小紅も栄佐から招待券を貰っていたのだけれど、実はこの二日前から風邪を引き込み、寝込んでいた。京屋から引き受けた仕事の納期が迫っていて、夜なべしたのが祟ったようだった。

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