テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第6章 【残り菊~小紅と碧天~】 運命が動き出す瞬間

 ここまで来たら、栄佐の策に乗るしかない。小紅は腹をくくった。江戸っ子はやるときゃ、やるんだ。自分に言い聞かせた。
 夜着を脱ぎ、栄佐が出してくれた舞台衣装に手早く着替える。
 栄佐の今回の役は吉原の太夫(花魁)付きの振袖新造である。振袖新造は〝振新〟と呼ばれ、禿から昇格して花魁になるまでの言わば候補生だ。この時代はまだ姐花魁について座敷には出るが、客は取らない。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ