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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第6章 【残り菊~小紅と碧天~】 運命が動き出す瞬間

 梅光にはもちろんはるかに及ばないが、碧天と呼ぶ者も意外に多いのは愕いた。大部屋ながら浮世絵にまでなり、一部に熱狂的ファンがいるというのは、どうやら本当のようである。
 その碧天の初めての役付き舞台ともなれば、余計に重圧に押し潰されそうな小紅だ。
 花魁道中は本当にただ歩くだけなので、それは助かった。舞台を長い時間かけて歩き、やっと出番が終わったときは、もう一生分の集中力を使い果たしたかと思った。

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