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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第6章 【残り菊~小紅と碧天~】 運命が動き出す瞬間

 着替え終わると控え室を出て、これも彼に言われたように通路で栄佐を待つ。
 四半刻も待たない中に通路の向こうから、栄佐が駆けてきた。
「よくやったな、小紅」
 栄佐は小紅を抱きしめた。
「俺も今し方、客席の方をちらと覗いてきたが、凄ぇ反響だぜ。今日の碧天はいつもにも増して可憐で色っぽくて、本物の娘みたいだと皆が興奮して喋っていた」
 そこで栄佐は小紅の耳許に口を寄せた。

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