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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第7章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】

「これは見事なものだ。私自身、今年早々に父から身代を譲り受けたとはいえ、まだ修行中の身で見識も浅くはありますが、これほどの仕立てを見たことはありませんよ」
 小紅はこの男―京屋市兵衛を見上げた。京屋の主人は代々、〝市兵衛〟を名乗る。この若者は確か二十一になったばかりだと聞いた。先代から今年の正月に身代を受け継いだばかりの新しい京屋の主人である。

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