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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第7章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】

 十五の春に大坂から江戸に戻り、今度は父の傍らで京屋の商いについて実地で学び今年、六年目にして京屋の暖簾を継いだのである。
 確かに坊ちゃん育ちの―良い意味での育ちの良さを感じさせる鷹揚さが徳太郎にはあった。それは鋳掛け屋の倅として生まれ育ち、貧乏から抜け出したさに京屋に奉公に出た先代市兵衛にはないものだった。

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