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　だが、小紅にはたとえ京屋の若主人がどれほど魅力的であろうとも、栄佐に敵うことはない。小紅にとって江戸一の男は板東碧天なのだから。
　その日、小紅はいつものように過分なほどの仕立賃を貰って帰途についた。いつもはお彩が応対し、仕立物を検分するのだが、今日はお彩が親戚の婚礼で外せず、例外的に京屋の主人自らが対応してくれたのだろう。