テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第7章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】

 大店の主人というのは、いつもこんな突拍子もないことばかりを口にするものなのだろうか。いや、少なくとも女と夜逃げした顔も思い出したくない父親はこんな風ではなかったし、大好きだった亡くなった叔父も違っていた。
 ふいに小紅はこれ以上、市兵衛といるのが息苦しくなってきた。市兵衛を相手にしていると、会話が空回りばかりしていくような気がして、疲れてしまう。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ