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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第8章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 すれ違い

 すべてのものを棄てて選んだこの道に見込みはないかもしれない。その考えは時に彼を奈落の底に突き落とし、心をどす黒い絶望という名の感情で染め上げた。
 また小紅の顔が瞼をよぎった。栄佐に酷い言葉を投げつけられて、可哀想に小紅は泣いていた。
 別の男に手籠めにされかけ、いまだに恐怖に震えて目覚める夜もあるという小紅を一生かけて守ろうと心に決めたのに、いずれは求婚して所帯を持って暮らそうと心に決めているのに、そんな大切な女を泣かせてしまった。

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