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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第1章 【残り菊~小紅と碧天~】 始まりは雨

「―そんなことは百も承知よ。でも、私が恩義を感じるのは叔父さまに対してであって、あなたは関係ないでしょう。言われなくても、叔父さまのためにも難波屋のためにも、できるだけのことはさせて頂くつもりだから、心配しないで」
 また人差し指を顎にかけ、仰のかさせれる。
「判ってるのなら、俺の言うことにいちいち逆らうな」
 突如として男の手が背中に回り、グッと引き寄せられた。大きな手が後頭部に回り、唇が強引に重なった。

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