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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第8章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 すれ違い

「そこまで愕くこともないと思うけどね」
 市兵衛が面白そうに小紅を見ている。
「実は六日前にあなたが京屋に来た日、私は母にあなたのことを話したんだ。もちろん仕事のことを報告したんだけれども、その他にも随分と器量も良くて感じの良い娘さんが意外なところにいたものだから、是非、あんな娘を女房に迎えたいと言ったんです」
 小紅はあまりの話の展開に最早、言葉もなかった。

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