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「神さまもこれだけの願いを聞き届けるには、ちっと力が要るよな」
　たった今、自分が掛けたばかりの絵馬を見つめ、栄佐は肩を竦めた。よもや小紅も同じ目的でまた数日に一度は必ず願掛けに詣でているとは露ほども知らない栄佐である。
　随明寺の絵馬堂といえば、恋愛成就にご利益があるとは誰でも知っている。しかし、意外に技芸、つまり芸事を嗜む連中にもご利益をもたらしてくれる神さまであることを知る者は少ない。