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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第8章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 すれ違い

 おたつが母なら、六十近い源五郎は栄佐にとって祖父に等しかった。その源五郎が追いすがり、袴の裾に取り縋ろうとするのを栄佐は振り切って屋敷を出た。
 今でも〝殿ォ〟と涙混じりの悲痛な声で訴えていた爺の心根を思うと、居たたまれなくなる。

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