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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第8章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 すれ違い

 男ぶりも悪くはなく、むしろ、役者を長年やっている彼の厳しい眼から見ても、なかなかの美男と見えた。これでは若い女が放っておかないはずだ。
 栄佐とて、その男の隣に座って微笑んでいるのが小紅ではなく、よその見知らぬ女だったならば、笑って通り過ぎていただろう。だが、相手が小紅となれば話は別だ。
―小紅は俺の女だぞ。
 栄佐は歯がみしながら、なおも談笑する二人を物陰から見守った。

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