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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐

 心の嵐

 肝心の栄佐とは行き来もないままに日は過ぎた。いよいよ明日で九月も終わるという日、小紅はまた随明寺に詣でた。
 今度は願掛けが目的ではない。むろん、絵馬堂の前でもいつものように手を合わせたが、行くところは他にあった。
 大池の更に奥まった最奥部には墓地がある。その広大な墓地の一角には叔父武平が永眠(ねむ)っている。

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