
一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐
小紅は心の中で叔父に話しかけながら、墓石を愛おしげに撫でた。
ふと、小紅の耳奥でありし日の叔父の声が聞こえた。
―私も今、この場でお前を私のものにしてしまえたらとどれだけ思うことか。だが、あれほど一途にお前を慕っている倅(準太郎)の気持ちを知りながら、それはできない。
―お前もいつか、一生涯を共に歩く伴侶とめぐり逢うだろう。そのときは縁の糸を大切にしなさい。人は誰でも、めぐり逢い、そうなるべくしてなった相手が運命の相手なんだ。
ふと、小紅の耳奥でありし日の叔父の声が聞こえた。
―私も今、この場でお前を私のものにしてしまえたらとどれだけ思うことか。だが、あれほど一途にお前を慕っている倅(準太郎)の気持ちを知りながら、それはできない。
―お前もいつか、一生涯を共に歩く伴侶とめぐり逢うだろう。そのときは縁の糸を大切にしなさい。人は誰でも、めぐり逢い、そうなるべくしてなった相手が運命の相手なんだ。
