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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐

 わざと刻をかけてゆっくりと歩いたのは、やはり時間を少しでも先へ引き延ばしたかったからと頭の中に散らばっている無数の考えを上手く纏める言葉を探していたからだ。
 既に覚悟と決意は決まっている。が、それをどのような言葉で相手に伝えれば、できるだけ相手を傷つけ怒らせずには事が収まるのかを思案していたのだ。言い様によっては京屋ほどの大身代を敵に回し、割の良い仕事先を失うことになる。

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