テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐

「それは何でしょう?」
 藁にも縋る想いで問えば、市兵衛は今度は彼女と視線をしっかりと合わせて頷いた。
「彼はあなたをどうしようもないくらい―己れを見失うほどに愛しているのだと思いますよ。だからこそ、力尽くでもあなたを欲しいと欲望に負けてしまったのでしょう。それが言い訳になるとは思えない。でも、この上なく魅力的なあなたを前にして我を失わずにはいられなかった男心も理解してやってとまでは言いませんが、同情の余地があるのではありませんか?」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ