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一度だけ抱いて～花は蝶に誘われてひらく～

第10章 第一部・第二話【赤とんぼ～小紅と碧天～】　心の嵐

「小紅、俺ァ、しばらく舞台から遠ざかることにした」
「そんな―、芝居は栄佐さんの生命だったんでしょ。立て役になるのが長年の夢だったのに、諦めちゃっても良いの、後悔はしないの？」
　栄佐がまた天を振り仰いだ。
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