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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐

 その真剣すぎるほど真剣な面持ちに、胸の水面が小さく波立った。
―私はやっぱり、栄佐さんを好きなんだわ。
 勇気を出して栄佐の胸に頬を預けてみたら、大好きな彼の匂いがふんわりと鼻腔をくすぐった。
 もしかしたら、栄佐を信じて心身共に受け容れられるのは、それほど先のことでもなく、小紅が考えているほど難しくはないのかもしれない。そう素直に思えたことが何より嬉しくて、小紅はトンと、もう一度、栄佐の逞しい胸に頭をぶつけてみた。

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