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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐

 痴話喧嘩を続ける二人を斜向かいから障子を細めに開けて、大工の錠吉・おしか夫婦の五歳になる倅がそっと様子を窺っている。
 今日も江戸は町外れの粗末な棟割り長屋の上には、すっかり秋めいた江戸の空が一杯にひろがっている。所々、刷毛で刷いたようなちぎれ雲が浮かぶ蒼空をたくさんの赤とんぼが群れ飛んでいた。
 
 
   (第一部第二話【赤とんぼ】おわり)

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