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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第11章 第一部第三話【月戀桜~つきこいざくら~】 疑惑

 京屋の主人との縁談を断っても、市兵衛の母、つまり大内儀(おかみ)のお彩(さい)は今も変わらず小紅に仕事を回してくれる。小紅はお針の腕を活かして、仕立物の内職を生業(なりわい)としているのだ。
肝心の市兵衛にはあれ以来、顔を合わせることもなく過ぎている。思慮深い彼のことだから、意図して小紅の前に姿を現さないようにしているのだろう。

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