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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第11章 第一部第三話【月戀桜~つきこいざくら~】 疑惑

 女形(おやま)なんて、所詮は女々しい男の典型のようなもの。それが栄佐を知る前の小紅の想像の限界であった。 ところが、である。栄佐は見たところ、少しも女々しくはない―どころか、凛々しい男ぶりだ。しかし、流石に凛々しくはあっても、武骨な印象はなく、どこまでも優美である。
 立ち居振る舞いが優美なのは単に役者をしているからだけではない。何というのか生まれながらに身に備わった優雅さというものが彼にはあった。単なる容貌や体軀の問題ではないというのだけは小紅にも判る。

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