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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第11章 第一部第三話【月戀桜~つきこいざくら~】 疑惑

 見かけよりは饒舌なその男は言うだけ言うと、そのまま踵を返そうとした。その背に声をかけるのはかなりの勇気が要った。
「あの―、栄佐さんに何かご用でしょうか? 何なら、伝言でも」
 宇之助という男は首だけねじ曲げるようにして振り向いた。
「なに、ちょっとした昔なじみですよ」
「昔なじみ?」
―こんな危険そうな男と栄佐さんが昔なじみですって?

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