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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第2章 【残り菊~小紅と碧天~】 恋一夜

 恋一夜

 だが、その小紅の決意も脆く崩れ去るような出来事が起こった。
 難波屋で起居するようになって半月が過ぎたある日のことである。暦は既に師走に入っていた。
「大小掛け軸、暦(こよみ)は要らんかね~」
 師走になると江戸の町の至るところで見かけられる暦売りが来年の暦を売る時季になった。これは江戸の風物詩でもある。

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