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一度だけ抱いて～花は蝶に誘われてひらく～

第12章 第一部第三話【月戀桜～つきこいざくら～】　十六夜の月

「お前は俺の女房でも何でもねえ。こんなときだけ女房面して俺を束縛するのは止めてくんな。もし、俺をどこにも行かせたくないのなら、今夜、お前自身が俺のところに来い」
　しまいまで聞かずに小紅は栄佐の住まいを飛び出した。自分の家に駆け込むと、両手で顔を覆って泣いた。
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