ソウル・雨─AtoZ.
第3章 霖雨
…ふたりが向かい合った廊下も、薄暗い。
…真っ白な胸元に高い鼻梁を触れさせながら云った。「僕のこの後の用事って、冷蔵庫の中の片付けと寝室の掃除なんですけどね」 何か云いかけたユノの言葉を、床に落ちたレインコートの中から鳴りだしたスマホが封じた。「─ほら。約束あるんでしょう、動かないで」仰け反り、壁に頭を擦り付けたユノの姿を何の感情も無い眼差しで捉えながら、ユノの脚をゆっくりと持ち上げる。
「…アッ。─痛い」ユノが顔を顰める。「膝、ですか」そのままの姿勢で訊く…「雨なのに、出ようとするから」脚に優しく触れて「こういう日は…痛むんですよ─」
ユノはもう何も聞いていなかった。降りを増したらしい外の雨音を、聴いているかのように項垂れ、…やがて、泣き出した幼児の仕草でチャンミンにしがみつく。
……口を指先で拭い、チャンミンがユノの体を柔らかく離した。足元に落ちたレインコートを丁寧にたたみ、廊下の隅に置くと「ユノ…。大雨だし運転気をつけて下さいね」踵を返し、また、浴室に入っていった。
…真っ白な胸元に高い鼻梁を触れさせながら云った。「僕のこの後の用事って、冷蔵庫の中の片付けと寝室の掃除なんですけどね」 何か云いかけたユノの言葉を、床に落ちたレインコートの中から鳴りだしたスマホが封じた。「─ほら。約束あるんでしょう、動かないで」仰け反り、壁に頭を擦り付けたユノの姿を何の感情も無い眼差しで捉えながら、ユノの脚をゆっくりと持ち上げる。
「…アッ。─痛い」ユノが顔を顰める。「膝、ですか」そのままの姿勢で訊く…「雨なのに、出ようとするから」脚に優しく触れて「こういう日は…痛むんですよ─」
ユノはもう何も聞いていなかった。降りを増したらしい外の雨音を、聴いているかのように項垂れ、…やがて、泣き出した幼児の仕草でチャンミンにしがみつく。
……口を指先で拭い、チャンミンがユノの体を柔らかく離した。足元に落ちたレインコートを丁寧にたたみ、廊下の隅に置くと「ユノ…。大雨だし運転気をつけて下さいね」踵を返し、また、浴室に入っていった。