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ソウル・雨─AtoZ.

第7章 エンドレスナイト

 額の上に乱れかかる前髪を、ゆっくりした仕草で掻き上げる。…思い出したように溜め息が、こぼれ落ちる。「チャンミン。お前何か思い違いしてる…」その言葉に、微笑みで応えた。「自分ひとり、─そう思ってるんじゃ…」「それなら─良かったんだけど」「…」チャンミンの横顔は間接照明のあかりを受け、陰影の濃い宗教画のよう…。
 その作り物めいた唇が、動く─。「いつも抱きしめて…飛びつけばいつも─」言葉を探す代わりにユノを見つめた。
「─ユノは…ちっとも変わらないね」また困惑して眉を寄せる。「俺はやっぱり、分からない─」「そう?─」身動ぎせず、呟くチャンミンの顔色を、ユノはソッと窺う。「チャンミン。体調…よくないんだろ」頬に触れようとする。…顔を背ける。「そう云うところ、変わってないね」
 蒼ざめた硝子の窓を、また、降り出す雨が叩き…サイドテーブルの時計に目をやったユノに「ユノに抱かれて泣いて…そのまま死にたい」振り返り、チャンミンを見つめ返す…。
 ─涙を流しているのだろうか─唇は笑みの形で…。「どうして─何も云わないの」冷淡な口調だった。「ユノが他を見てるって…、こういうことだよ」
 ─不意の沈黙をどちらも破ろうとしなかった。

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