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夜が明けても傍にいて。

第14章 課長のとなり

楽しそうな愛花さんの声と少し疲れたような慎也の声が静かな空間に響いていた。


「慎也、これ食べて?前によく私の実家から送ってもらってたぬか漬け。」


「あー懐かしいな…。これ旨いんだよな。」


二人は愛花さんが作って来たと思われるお弁当を寄り添うように食べていた。


「お酒と外食ばっかりで胃、やられてるでしょう?慎也の好きな物沢山作ったから沢山食べてね。」


「あぁ、サンキュ。」


---慎也…

慎也は、私のことが好きなんでしょう?


なのになんで別れたその人の手作り弁当を美味しそうに食べてるの?


慎也の“好き”って何?




“ガタッ”


!!!




私は誤ってお弁当が入った袋を床に落としてしまった。


二人は箸を止めてこちらを見た。


「何だ?」


「私ちょっと見てくるわ。」


「いや、いい…。
俺が見てくる。」



!!!!!


---まるで、愛花さんが危険な目に合うことから守るように課長は席を立ってこちらへ向かってきた。



私は既に、泣いていた…。


声を押し殺して大粒の涙をボロボロと流していた。



こんなみっともない顔で会いたくなかった私はお弁当を拾うことも忘れて急いでその場を立ち去った。







慎也がお弁当の袋に気付きそれを拾い上げてオフィスに戻ると


“気味が悪いから捨てましょ”と


愛花さんの手によって
ゴミ箱に捨てられたことに私は気付くことは無かった。

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