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夜が明けても傍にいて。

第2章 出逢い

“先に帰る。”

美穂にメールを入れたけど会話に夢中で気付かない。後で怒られてもいいや、もう限界だ。


「ちょっとトイレ...」

言ったって誰も聞いてはいないだろうけど。


個室を出た時だった。

この部屋に入ってこようとしている男性にぶつかりそうになってしまった。


「あっ、ごめんなさい。」


「...こっちこそ。」


この人が、遅刻の人?

でも、お酒と煙草の匂いがする...。


--だけど、そんな事どうでもいいと思えるくらい、とてつもなくカッコいい。

帰ろうと思ったけどトイレを済ませたら戻って来ようかな?


そう思っていると


「送るよ。帰るんでしょ?」


こっちだよ、と私の手を引いてその人は強引に歩き出した。


「あ、あの!」


「何?」


ピタッと足を止めて振り向く彼が真っ直ぐに私を見つめるから、何だか妙に身体が熱くなってきて


「い、いえ...別に。」

何も言えなくなってしまった。



だけど...


「あなたも酔ってますよね?」

「あぁ、少し。」



「送るってどうやって?」

「タクシーだよ。」


タクシーでなら自分一人でも帰れます...
とは言わなかった。


この人ともう少し一緒に居たい。

何故か...そう思ったから。

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