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シアワセ

第2章 悲しい娘 喜一side

清華と会うようになって2週間。

いつも何もせず、約一時間半ぐらい話をするのが日課になった

清華ちゃんと会う前に店のオーナーの部屋を訪れようと
近くにいた業務員に声をかける

「オーナーの弟なんですけど…兄の部屋はどこでしょうか?」
「城端様。…オーナーの部屋はこの通路の突き当たりになります」
「ありがとう」

名前を、覚えているのか。
まだ数回しか来ていないのに

ノックをすると、兄のいつもより、少し真面目な声が聞こえる

「………はい」
「……俺です」
「…入ってこい」

俺は、ひとつ深呼吸をするとドアを開ける
そこには兄と、もう一人綺麗な女の人が立っていた

誰だ?

「…悪いな、由利恵…」
「大丈夫よ。後でまたくるわ」

そう言うと、由利恵と呼ばれた女の人は会釈をして部屋を出ていく

「……邪魔した?」
「いや。……どうした?」
「前言撤回するよ」
「?」

兄が首をかしげてこちらを向く

「…清華ちゃんのこと……初めはあの女の替わりに壊してやろうとも思った」
「!」
「だけど…あの子のことを……俺は、もっと知りたくなった」
「………」

兄が驚いた顔をしてこちらを見る

「……お前」
「…あの女とは…違う。……あの子の過去を、あの子がこの仕事をし始めた理由を…あんたは知ってるんだろ?」
「………あぁ」

兄は少し遠くを見つめて頷く。

「…兄貴からは聞かないよ」


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