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君の隣の相棒さん、

第4章 煙草が示す気持ち(伊)

『先輩は、私が好きな珈琲の匂いがするんです。珈琲は母が大好きで毎日飲んでいるもの‥‥厳しさの中に感じる優しさって言ったら分かります?』


「お前‥‥ああ。分かる、何となくだが…」


『そう…だから先輩はどっちつかず裏切れない匂いの持ち主なんですよね。本当‥‥怖いくらいに』


ふいに伝う一筋の雫を慌てて拭った彼奴。
一時だけ、唯一彼奴が感情を漏らした瞬間なんだと俺は思った。


「悪い。嫌なこと思いださせたみたいでよ」


『何のことですか?言ったじゃないですか、独り言だって。だから先輩が謝るようなことは何もありませんよ』


当たり前でしょ、とでも言うかのようにそう言った彼奴を、俺は気付いたら抱き締めていた。

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