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『私は！‥私はただ、伊丹さんを守りたかった‥‥』


気付いたら漏れていた心の声は震えていた。
私らしくもない、涙が頬を伝ったのが分かった。

また感じる温かさ。安心感。
その時は感じている余裕なんてなかった恐怖というものが、今になって私を襲った。


「‥‥バカ野郎っ」


呟くように言って抱き寄せては、私の髪を乱暴に掻き乱す私の好きなあの人の手。
優しいだけじゃない、強くて男らしいものを感じるいつも見ていたその手が、今私を抱き締めている。


────薄い煙草の匂いと伊丹さん自身の香り。
ずっと感じたいと願っていたその温もりを今こんなにも近くで感じられている。


私は流れて止まらない涙を止めようとするように伊丹さんに目一杯抱き着いたら伊丹さんは、我慢しなくていいって言った。

そんなこと言われたら止められるものも止められなくなる…。
結局私は、伊丹さんの言葉に負けて暫く泣き続けた。