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君の隣の相棒さん、

第35章 それでいい(伊)

気付いたら、あの人の首にそっとすがりつく自分がいた。
あの人に抱き締められているという感覚と、その不思議な香りに俺の理性や意識は鈍らされ、けれどもそのどちらとも消されてしまう訳でもないのでそれが逆に妙なもどかしさを生んでいた。



『伊丹さん‥いい匂いがします。なんだか大河内さんに近いものを感じますね‥‥』



首にすがりつく俺と同じ様に俺の首に鼻を近付けていたあの人。

同時に発せられた言葉に俺は嫉妬のそれとは異なる感情を抱かされていた。
そして気付けば、口にしていた。



「俺は、あの人とは違います」



次の瞬間、ぶつかり合う視線。
そんなことで止めておけば良かったものの、どうにもならないのが本能というもの。
無意識に注がれたその視線はあの人の唇に向かい、次には俺の唇が重ねられていた‥。

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