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恋してキスして抱きしめて

第15章 あたしだけを、見て

『 “ 薄情者 ” 』

『………!』



ヒメの声で、ハッと我に返る。


止まっていた指の間から、短くなった煙草が灰皿へと落ちていった。



『朱莉が結婚したと噂が広まった時、周りが口ぐちに言ってた言葉だ』

『………!』

『ユーリが “ 俺が悪い ” って擁護すればするほど、みんなが陰で朱莉を責めてたな』

『…………』

『1000人いなくても、お前は自分が思ってる以上に好かれてるんだよ。
お前の知らない所で、関係の無い部外者までもが、誹謗中傷に加担してきやがった』



………ヒメが淡々と告げる事実は、蓮からも聞いていた。


こいつらが静かに怒りを表してからは、誰も何も言わなくなったってことも、別の奴からの情報で得ていた。



……だけど


ふられたあとも、もう一度朱莉とやり直したいと願っていた俺は


その可能性がゼロになったことを知り


行き場の無くなった想いを、抑え込むことだけで精一杯だった。


色んなものに蓋をして、高校の時に逆戻りするかのように


適当でいいかげんな自分を、演じ続けるようになった。

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