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恋してキスして抱きしめて

第15章 あたしだけを、見て

『……それでも、朱莉が選んだ道だ』



そう言いながらグラスの残りを空けて、財布を取り出す。


……今夜は、これ以上飲む気がしねぇ。



『好きな男が一生傍にいるなら、それだけで幸せじゃねーか』

『…………』

『帰るよ。
明日、大事な用があるんだ』



焦点の合わない目線を落として、札を何枚か抜き出そうとすると


追い払うように、ヒメの手にパシッと叩かれた。



『悪かったなユーリ。
近いとはいえ、俺も外野にいる立場なのに』

『…………』

『また誘う。
蓮も最近は国内にいるし、言わねぇけどお前に会いたいはずだから』



夜景と照明が、その茶髪をキラキラと光らせる。


煙草の箱と財布をカバンに放りこんで、無言でイスから立ち上がると



『ユーリ』



目線を前に向けたまま、ヒメが俺を呼んだ。



『戻る必要は無い。

既婚者に何かを語る権利は無いし、知る必要も無い。

だけど』



深い瞳に、もう一度切なさが宿る。



『せめて、 “ 終わらせて ” やれよ。

……お前も、朱莉も、心が次に進む為に』

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