テキストサイズ

恋してキスして抱きしめて

第17章 積乱雲と、スコール

「…………っ」



………あたしは、声が出なくなってしまった。



目の前で、朱莉さんの目に涙が溢れるのと同時に



“ 関係ない ” と冷たく言い放った、ユーリさんの手が………



あたしの肩の上で、小さく震えていた。




「……うん、そうだったね……」




朱莉さんは、麦わら帽子を両手で掴むと、ツバで目を隠した。




「ごめんね、ユーリ。

この前、偶然ユーリに逢うことができて……

私、ちょっと夢を見てしまったの」


「…………」


「そんなことを願う資格も、立場でもないのに……

本当にごめんなさい」




朱莉さんは再び帽子から手を離すと


あたしとユーリさんを、交互にゆっくりと見つめて


そっと自分の涙を指で拭った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ