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恋してキスして抱きしめて

第17章 積乱雲と、スコール

ユーリさんが、やっとあたしを見てくれた。


だけど、その顔は青白くて


目が泳いでいる。



「……ちーちゃん……」

「大丈夫です、ユーリさん。
朱莉さん、きっと暑さで倒れたんだと思います」



………あたし以上に、ユーリさんは恐怖に震えている。


だけど、彼女に付き添うのはユーリさんの方がいい。


それに………



「…………っ」



あたしは手を伸ばして、ユーリさんのデニムのポケットに入っていた、携帯を引きぬいた。



「病院が分かったら、連絡ください」

「…………!」



携帯をユーリさんの手に渡して、転がっている自分のバッグを手繰り寄せる。



「……千夏……!」



ユーリさんの声が後ろから聞こえたけど


あたしは2人を残して、駅の方向へ走り出した。




ポツリ、ポツリと降り始めた



雨の音を聞きながら……


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